平成30年春場所の幕内上位力士と3つのトピック

2018年9月4日

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入門して12年の年月を費やして自身初の幕内最高優勝を14勝1敗の成績で達成した春日野部屋所属の栃ノ心関を決めて幕を下ろした初場所千秋楽から1ヵ月余りがたち、今年も大阪に春を呼び込むともいわれることがある、大相撲春場所が3月11日に初日を迎えます。この春場所は久しぶりに新三役力士、新入幕力士が共に不在となりました。

例年、春場所は「荒れる春場所」とも呼ばれることがある通り、場所全体を通じて横綱が金星を複数回配給したり、幕内最高優勝の筆頭にいた力士が終盤に星を落として大混戦になったりする可能性が高いです。

今回は前頭4枚目までの幕内上位力士の顔ぶれを紹介した上で、3つの注目トピックを取り上げてみたいと思います。

平成30年春場所の幕内上位の顔ぶれとは

まず、平成30年2月26日に発表された今場所の番付のうち、幕内上位にあたる前頭4枚目までの番付を紹介します。

3人の横綱の番付では、先場所皆勤で11勝だった井筒部屋所属の鶴竜関が最高位にあたる東の正横綱となりました。西の正横綱は先場所で2勝3敗となった地点で途中休場した宮城野部屋所属の白鵬関です。東に座るもう1人は、同じく先場所で1勝5敗となった時点で途中休場となった田子ノ浦部屋所属の稀勢の里関です。2人とも再起できるかどうかの場所となりそうです。

大関では、先場所12勝3敗の準優勝で、今場所の好成績が期待される田子ノ浦部屋所属の高安関が東大関になり、8勝止まりだった境川部屋所属の豪栄道関が西大関になったことから、東西が入れ替わる形となりました。

関脇の2人には、東に先場所関脇で勝ち越した出羽海部屋所属の御嶽海関が引き続き務めることになり、西には先場所優勝した栃ノ心関が2年弱の年月を有して復帰する形で務めます。両関脇共に10勝以上の好成績を残せるかどうかが期待される場所になりそうです。

小結の2人には、東に湊部屋所属の逸ノ城関が座り、西には先場所西前頭3枚目の番付で勝ち越した九重部屋所属の千代大龍関が座りました。両方とも最後に小結以上の番付にあたる三役を最後に勤めてから2年以上経っており、今場所は、この番付でも実力を発揮できるかが見所ではないかと思います。

ここからは、平幕力士にあたる前頭の番付での上位8人を紹介します。まず前頭筆頭には東が先場所西前頭5枚目の番付で9勝の好成績だった追手風部屋所属の遠藤関、西が先場所まで関脇を務めていたものの6勝止まりだった片男波部屋所属の玉鷲関がそれぞれ座ります。特に遠藤関は丸4年ぶりの新三役をかけた場所となり、好成績を収めるなどして夏場所で実現できるかが期待されます。玉鷲関は1場所で三役に戻れるかが焦点となっています。

2枚目は東が峰崎部屋所属の荒鷲関、西が伊勢ヶ濱部屋所属の宝富士関の中堅以上とされている力士となっています。両者とも先場所は8勝7敗の成績で勝ち越しており、荒鷲関は自己最高位の番付に乗せることができ、今場所は遠藤関と同様新三役をかけた正念場の場所となります。宝富士関はほぼ1年ぶりに幕内上位の番付に復帰した形となり、三役復帰をかけた場所となります。

3枚目は東が佐渡ヶ嶽部屋所属の琴奨菊関、西が貴乃花部屋所属の貴景勝関となっています。両者とも先場所は負け越してしまいましたが、引き続き幕内上位の番付で相撲を取ることになり、ベテランと若手、それぞれの持ち味の相撲が見られるかが期待されると思います。

4枚目は東が二所ノ関部屋所属の松鳳山関、西が時津風部屋所属の正代関となっています。正代関は先場所も4枚目の番付で負け越してしまいましたが、7勝だったため西の番付に回る形になりました。一方の松鳳山関は先場所東前頭9枚目の番付で9勝6敗の好成績を残して半年ぶりに、幕内上位に帰ってきました。両者とも久しぶりの三役復帰をかけた場所となります。

これらのように幕内上位の番付には久しぶりに復帰して実力を出せるかが期待される力士から、新三役を狙う力士まで、土俵を盛り上げそうな顔ぶれになったと思います。

稀勢の里関の引退危機と照ノ富士関の十両陥落が意味するものとは

今から丁度1年前の平成29年春場所は、稀勢の里関と当時大関だった照ノ富士関が13勝2敗での優勝決定戦を繰り広げて、13日目の横綱日馬富士関戦に敗れた際、左肩等に大怪我を負った稀勢の里関が横綱として初優勝した場所でした。それから丸1年が経ちましたが、この2人の関取の状況は大きく変わってしまいました。

まず、稀勢の里関は昨年の夏場所から5場所連続で全休したり、場所の途中で休場したりしています。残念ながら、この春場所も休場することが決定してしまいました。このことから、次の夏場所が進退をかけた場所であり、改善されていなければ引退する可能性があるという意見や声も少なからず聞こえてきます。これには怪我以外にも不安要素が出てきたことなどが挙げられます。

稀勢の里関の休場の主因は大怪我を負った場所から半年間は、その怪我が完治されていないことが挙げられますが、その後は別の箇所を怪我したり、体重が増加するなどの体格面に問題が生じたりしたことによるものも現れており、特に先場所は取り組みが始まってから数秒ほどで相手に重心を上げられて寄り切られる内容が多く見受けられるなど、明らかに大怪我以外の影響が出ている可能性が高いものとなってしまいました。

また、今年で32歳になり、体力的な回復も厳しくなっていると考えられることから、怪我が完治できても全盛期のような左四つに組んでから寄り切ったり、左からおっつけを交えながら押し出したりして白星を重ねる強みの相撲が復活する可能性は低いと考えられます。

さらに、状況的には場所の途中で右膝に大怪我を負ったにも拘らず、当時の武蔵川部屋所属の第67代横綱武蔵丸関との優勝決定戦の末に優勝した平成の大横綱の1人とされている第65代横綱貴乃花関と重なる面もあり、彼もその感動的な場所から1年以上怪我の治療などで全休しており、復帰できたのはほぼ1年半後の平成14年秋場所でした。この場所は12勝を挙げたものの怪我の状況が良くなかったことなどから、結果として半年も経たないうちに30歳で現役を引退していること考えても引退危機の声が出てきても仕方ないと思います。ただ、来場所出場した場合は、少しでも土俵際を残すなど横綱らしい相撲が数番でも見られることを願いたいと思います。

照ノ富士関の場合は夏場所には出場して12勝を挙げましたが、それ以降は、左膝半月板を痛めた怪我の状況が悪化したことや病気にかかったことなどから、稀勢の里関と同じく場所の途中で休場することを繰り返す状況になってしまいました。照ノ富士関の番付は大関だったため、2場所連続で休場した秋場所終了地点で大関から陥落し、今場所は西十両5枚目の地位まで落ちてしまいました。これは尾上部屋所属で幕内優勝を1回果たした元大関把瑠都関以来のことです。

照ノ富士関の休場の主因となっている膝の怪我は少なくとも大関に昇進して間もない2年半前には負っているもので、これ以降は膝以外にも肩を骨折するなど複数個所を故障する状況に悪化しています。古傷が長期間に及ぶ原因として、取組が力ずくに脇を抱えて出たり、引っ張り込んだりする強引な攻め方をする内容が多い点や、土俵際まで追い詰められた際に痛めている膝で無理に残そうとする点などが挙げられます。特に前者の内容は、腕や膝などに負担がかかって怪我しやすいことから新たな個所を怪我する可能性があり、無理に残すことで怪我の状況が悪化する可能性が高いと考えられます。

このような状況を少しでも回避できる手法の1つとして自身の強みである右四つに組んでから寄り切ったり押し出したりする内容に専念して膝などへの負担を軽くすることが挙げられます。勿論、膝の状況がある程度良くならないと厳しいため、まずは怪我をある程度良くすることが回復への近道であり、それができれば全盛期のような右四つに組んでから攻める内容を再びお目にかかる機会があるかもしれません。

両者に共通することとして、怪我の他にも悪い体勢に容易にさせられてしまったり、怪我をさらに呼び込むような攻め方をする癖が治らなかったりするなどの好ましくない展開に慣れてしまい、これらを繰り返していることがあります。一旦、そのような状況に慣れてしまうと、そこから脱却することは肉体的だけでなく精神的にも容易ではないと思います。少なくとも、脱却の糸口を見つけて再び強みを発揮する内容が取れるかを長期的な視点で見たほうがいいかもしれません。

ついに横綱在位も1位になった平成の大横綱白鵬関

この春場所は平成の大横綱の1人とされている白鵬関がまた1つ大記録を作ることになりました。それは横綱の最長在位記録を塗り替えたことです。これまでの1位は昭和の大横綱の1人とされている三保ヶ関部屋所属の第55代横綱北の湖関が記録した63場所でした。10年以上横綱を務めたのは北の湖関と白鵬関の2人しかおらず、白鵬関は今年の名古屋場所まで現役を続けた場合、丸11年間横綱を務めたことになります。

北の湖関が現役を引退したのは昭和60年初場所の前半で、当時31歳でした。白鵬関はこの春場所の初日で33歳になり、ベテランの領域に入ったと考えても良いと思います。約11年間横綱を務めることができたのは昇進するまでの間に培った四股や鉄砲などの稽古を通じて強力な基礎を身につけることができたことが考えられます。今後は、この基礎力などでどこまで横綱を務めることができるのかという関心もでてきそうです。

今場所、話題豊富で盛り上がりそうな新十両力士の紹介

先述した通り、今場所は新三役も新入幕もありませんが、十両には新たに話題が豊富な2人が関取として初めて土俵に立ちます。

まず、貴公俊関は現在20歳で、今から丁度5年前に中学卒業で貴乃花部屋に入門して実力を磨いてきた力士です。入門するまではバスケットボールのスポーツ経験があり、県単位の大会で3位になるほどの実力がありましたが、相撲の経験はありませんでした。入門後は右四つに組んでから寄り切ったり左の上手から投げたりする強みを徐々に身につけていき、入門丸2年で幕下に昇進できました。それ以降は幕下に定着して少しずつ番付を上げていき、先場所は東幕下7枚目の番付で5勝2敗の成績を残して関取の座を掴むことができました。

貴公俊関には双子の弟である貴源治関がいることから、角界では19例目の兄弟関取が誕生したことになります。兄弟力士の例としては彼らの師匠で弟である貴乃花関と兄である第66代横綱若乃花関や、直近では昨年関取に昇進した弟である追手風部屋所属の翔猿関と兄である木瀬部屋所属の英乃海関のケースなどがありますが、今回のような双子のケースは史上初めての事となります。なお、貴源治関は1年早く関取の座を掴んでおり、廻しを取らずに押し出したり、突き倒したりして攻めていく突き押し相撲中心の強みを活かせるようになるなどしたことで、半年前から十両の番付に定着できる力を身につけられるようになりました。今場所は自己最高位である東十両10枚目に上がって相撲を取ります。

また、両者は貴源治関が関取に上がるまでの1年間は巡業などの際のお楽しみイベントの1つである初っ切りを担当しており、双子の初っ切り力士として当時話題になりました。ちなみに翔猿関は今場所再び関取に復帰して十両の土俵に立ちます。

一方、炎鵬関は現在23歳で、地元の金沢学院大学の相撲部を経て丁度1年前に宮城野部屋に入門した力士です。ちなみに現在幕内で相撲を取っている高田川部屋所属の輝関とは同級生に当たります。入門するまでの間は、小学校に入る前から相撲を中心としたスポーツ経験を積み重ねてきており、その実力は学生時代に世界相撲選手権大会の連覇を含めて、10回の大会を優勝するほどでした。ちなみに、炎鵬関は相撲以外に小学生の頃には水球のスポーツ経験もありました。

入門後は、学生時代を中心に得た左四つに組んでから寄り切ったり、右の下手から投げたりする強みが活かさせたことなどから番付を急速に上げていくことができ、先場所は東前頭6枚目の番付で勝ち越すことができたことなどから僅か1年で関取の座を掴むことができました。ちなみに、入門して幕下に上がるまでの半年間は無傷で番付を駆け上がっており、幕下以外の階級で優勝したり、21連勝したりする実績を残しています。これに伴って三段目付出しなど、付出しなしで入門した力士としては4人目の所要6場所でのスピード出世を記録することができました。ちなみに、これを達成した力士で直近のケースでは木瀬部屋所属の常幸龍関で今から6年前に記録しています。なお、常幸龍関は2年前から幕下に陥落していますが、3年半前には小結として三役を経験しています。他には現在、時津風部屋で佐ノ山親方として後進の指導をしている元前頭土佐豊関と当時の大鳴戸部屋所属で小結まで昇進した元板井関のケースがあります。

炎鵬関は身長170cm弱に対し体重が100kgに満たない小柄の力士で、同じ宮城野部屋所属で軽量力士として活躍している石浦関を抜いて最軽量の関取となります。このことから、先述した石浦関や木瀬部屋所属で反り技など体型を活かした相撲内容で有名になった宇良関のように注目が集まる可能性が高いと考えられます。ちなみに宇良関は半年前の取組で右膝の前十字靭帯を痛める大怪我をして、途中休場や全休をした結果、今場所は幕下に陥落して土俵に立ちます。

炎鵬関は石浦関と同じく白鵬関の内弟子として入門した力士であり、十両で実力が通じるなどして幕内に昇進できれば、この3人での横綱土俵入りの様子が最速で今年中にも見られるかもしれません。

このように未経験から始めて5年で関取になれた貴公俊関と、わずか1年で関取の座を掴んだ炎鵬関は対象的ですが、どちらも十両の土俵を盛り上げてくれる若手力士として期待できるのではないかと思います。

まとめ

このように今年の春場所は、昨年の幕内の土俵を沸かした2人の調子が心配される反面、楽しみな若手の新十両力士2人の活躍が期待されるなど、見どころがしっかりとある場所であると言えるかもしれません。今月中旬からの15日間に期待したほうが良いと思います。