突き押しと向上心で大関を目指す阿武咲関

阿武咲関のプロフィール

阿武咲関は平成874日に青森県の津軽地方にある中里町で誕生し、現在21歳です。本名は打越奎也です。この阿武咲という四股名の由来としては、所属する阿武松部屋から「阿武」の2字を取ったものに、そこで花を咲かせてほしいという恩師の願いから「咲」と字を取って付けられたものとされています。

出典:力士プロフィール – 阿武咲 奎也 – 日本相撲協会公式サイト

阿武咲関は、スキーやスノーボードなどのスポーツ経験がありましたが、中心は相撲で、小学校入学前から地元の相撲道場に通って稽古を重ねていました。少年時代から体格が人一倍抜きん出ており、この段階で廻しを取らずに攻めていく突き押し相撲の技術の1つであるハズ押しや、おっつけを取得する練習を重ねたり、小学校低学年の時に上級生相手に相撲を取ったりするほどの素質がありました。この素質に加えて実力も備わっており、小学生と中学生の時に計3回も相撲選手権大会を優勝しており、連覇も1回経験しています。

高校に進学しても実力をさらに高めることができ、1年生の段階で団体戦のメンバー入りに貢献するほどでした。この高い実力と相撲道場の監督の縁などから16歳だった、平成25年初場所に元関脇益荒雄が師匠を務めている阿武松部屋に入門して初土俵を踏みました。

阿武咲関は角界に入門してからも高い実力を発揮することができ、入門して1年も経たないうちに幕下に昇進できました。そこでも負け越すことなく、入門丸2年で関取の座を掴みました。今年に入ると頭角を現すようになり、夏場所に新入幕を果たすと、史上初めて半年連続で10勝の好成績を収め続けることができ、この九州場所で新三役に昇進し、そこでも勝ち越したことから、来年は新関脇に昇進する可能性が高い場所となります。

新入幕で半年連続2ケタの大記録達成などで注目を集める

先述した通り、阿武咲関は20歳だった今年の夏場所で新入幕を果たすと、そこから3場所連続で2桁の勝利を収める好成績を残すことができました。新入幕から、このような記録を残すのは戦後初の快挙でした。現に、2場所連続でも阿武咲関を含めて7人しか達成できていない大記録であるため、達成した秋場所あたりから一気に注目を集めることになりました。新三役に上がった、この九州場所では2桁にはならなかったものの勝ち越しており、実力の高さを証明する形となりました。

これに加えて、幕内上位では90年代後半生まれが阿武咲関と貴乃花部屋に所属している貴景勝関の2人だけであり、同学年のライバル同士で知られていますが、好成績を収めたことから、先に入幕した貴景勝関を秋場所には逆転し、この九州場所では先に90年代後半生まれ初の新三役に昇進することができました。

ベンチプレスのパワーは大相撲に通用するか

先述したように阿武咲関は小学生のころから突き押しに特化した稽古を積み重ねてきたことなどから、腕などの上半身の筋肉は強く、中学1年生の時にはベンチプレスで165kgを上げたり、子供を乗せてタイヤ引きができたりするほどでした。

ところで、力士の中には自主トレーニングとしてベンチプレスなどの筋肉トレーニングで鍛えているケースもありますが、これが果たして相撲に効果的なのでしょうか。

そもそも、ベンチプレスとはベンチなどで仰向けに寝た状態でバーベルなどの重量物を上下に動かす筋肉トレーニングのことです。このトレーニングによって上腕三頭筋や三角筋など腕から肩にかけての上半身を鍛える効果があるとされています。なので、阿武咲関や大嶽部屋に所属している大砂嵐関のような突き押し相撲を武器にしているタイプでは立ち合いの際に押す力を強くすることができるため、効果的とされています。また、先代九重部屋師匠だった第58代横綱千代の富士関は肩の脱臼で一時出世に苦労した時期がありましたが、三角筋を鍛えて、投げたときの腕力に耐えられるようになり克服できたとされています。

一方、筋肉トレーニングをすると筋肉が硬くなってしまうという特徴もあり、相撲では宮城野部屋所属の第69代横綱白鵬関のように体が硬い方よりも、全体的に体が柔らかい方が相手の力を吸収できたり、大怪我に繋がりにくかったりする面で有利なスポーツとなっています。

したがって、ベンチプレスなどの筋肉トレーニングでは突き押しの力を高めるのには効果的と言えますが、怪我をしやすいなど長期的な面で考えると不利な面もあるといえると思います。

阿武咲関の家族構成

阿武咲関の家族には、父親と弟の2人がいますが、年の差という観点で特徴的なものがあります。現在阿武咲関は21歳ですが、彼の父親は38歳で、弟はまだ2歳です。つまり弟との年齢差が父親よりも大きいことになります。ちなみに父親は時々本場所を観戦しており、阿武咲関と顔立ちなどが似ているという話もあります。

元々の腕力と前向きな気持ちで実力を向上させている阿武咲関

阿武咲関の強みは、少年時代から培ってきた廻しを取らずに攻めていく突き押し相撲で、特に、体重が165kg程度の体を活かして電車道の如く一直線に出る内容もありました。幕内取組の決まり手でも、攻めの過程で生じた叩き込みを含めると廻しと関わらないタイプで半数近くを占めています。

また、先述したようにベンチプレスで高記録を残すほどの腕力の強さが、そのまま突き押しの相撲内容に活かされていることも強みになった要因と考えられます。

このような力や技術だけでなく、挑戦心や前向きな気持ちを持ち続けて猛稽古や本場所などの日常生活を送っている心理面も関脇昇進に繋がった要因の1つと考えられます。例えば、新入幕の場所である夏場所前に行った田子の浦部屋に所属している大関高安関との三番稽古では40番近い数を熟しましたが、終わった後には「高安関は圧力と残り腰は強い。きつかったけれど楽しい気持ちの方が大きいです」というコメントを残したことがありました。この稽古が新入幕で10勝することに繋がったといってもいいかもしれません。

阿武咲関が新関脇から大関へ目指すためには

新入幕から負け越すことなく次の初場所で新関脇に昇進することになる阿武咲関が次に目指すのは三役定着と新大関昇進となりますが、これを確実にするためには、股関節の固さなどが要因で、引き技に対して簡単に落ちてしまうという弱点を克服することが1つだと思います。これを克服する方法として立ち合いの際にぶつかるスピードをさらに速くしたり、相手に関係なく速攻で攻めていく強みを出したりすることが良いと指摘する親方がいます。弱点の克服が黒星を減らすことに繋がり、その結果、大関に昇進に近づくことになります。

まとめ

このように、少年時代から鍛えてきた上半身中心の力を活かした突き押し相撲と常に挑戦し続ける前向きな気持ちで今年後半に入って一気に実力を開花させた阿武咲関は強みを常に発揮できるようになれば、来年は90年代後半生まれ初の大関昇進も夢ではないかもしれません。今後が楽しみな力士の1人です。